2023/8/29

サッカー選手の股関節痛(グロインペイン症候群)について(症例紹介含む)

最近、診させていただいたサッカー選手の股関節痛を紹介します。
 
その前にサッカー選手で股関節が痛いという場合は、まず鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)を疑います。
 グロインペイン症候群は10代~30代で主にサッカーを行っている人に発症しやすい障害で、一度なると時間のかかってしまう症状です。
 
体幹から股関節周辺の筋や関節の柔軟性の低下による拘縮や
骨盤を支える筋力低下による不安定性
上肢から体幹と下肢の動きの連動性の低下などによって、
痛みと機能障害の悪循環が生じて症状が慢性化していきます。
 
プレー中は問題なく、練習終了後に痛みを自覚するところから、徐々に日常生活でも痛みを自覚することにより医療機関を受診することが多い。
無理にプレーを続けることにより、股関節の痛みだけでなく、体幹から股関節周辺の機能障害が生じやすくなります。
 
 
 
左股関節の痛みで来院
 
16歳(高校2年生)の男子、サッカー部に所属。
週に6日の練習で休みたくないとのこと。
 
【症状】
屈曲時痛(+)
歩行に問題はないがランニングで痛み(+)
階段上りでも痛み(+)
ボールを蹴るのも痛み(+)
 
状態としては、
長内転筋に押しての痛み(+)の痛み
ただし長内転筋の付着部の押しての痛み(-)
 
開排(両足でひし形を作る位置)でのストレッチで痛み(+)、また反対側と比べて制限(+)
屈曲強制でつまり感(+)
 
鑑別障害としては、
恥骨結合炎や大腿内転筋付着部炎、大腿直筋炎、腹直筋付着部炎、腸腰筋炎、鼠径ヘルニア(スポーツヘルニア)などがありますが問題なしでした。
 
上記のため長内転筋と鼠径部にアプローチを選択しました。
 
【治療】
長内転筋は縫工筋や薄筋と癒着することが多く、関節可動域の制限を作りやすい筋肉です。
まずは開排(両足でひし形を作る位置)の制限解除のために、長内転筋と縫工筋の癒着を組織間リリース(ISR)で解除。
次に股関節の屈曲(曲げる)の制限解除のために長内転筋と薄筋の癒着を組織間リリースで解除。
これにより開排(両足でひし形を作る位置)と股関節間のつまり感が消失し、また長内転筋の脚手の痛みも消失しました。
 

本来は2週間程度のスポーツ休止が必要ですが、サッカー強豪校なため休むことはできないということで、ストレッチを指導してまた1週間後に来るようにしました。

 

初期に行うリハビリとしては
股関節周囲筋の過剰に働く筋肉のストレッチと、不活性な筋肉のエクササイズから開始して、上肢-体幹-*下肢の連動エクササイズやエアロバイクなどによる荷重しない股関節運動、その後ジョギング、徐々にボールキック練習を行います。疼痛が消失したからといって、いたずらな早期復帰はかえって再発を繰り返す症状です。慢性化すると長期間(2~3ヵ月以上)スポーツ休止を余儀なくされるので注意が必要です。